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更には。
「てかそもそも、確かにあの告白はちょっと殺意湧きますけど───────」
「「「「湧かすな」」」」
「…………はい……。で、亜朗を気遣ってレジー先輩達に『貴族ではないのだから様はやめてあげて』って言ってくれてたし、嫌な人ではなさそう」
「そーそー♪亜朗にも『本当にゴメンね』って何回も謝ってたしね〜♪」
「まぁ……久々すぎる再会に感極まったってことで許してあげなくもない」
「「「「どこから目線なの……想ちゃん……」」」」
「亜朗の幼馴染み目線」
「「「「あぁ……ソウダネ……」」」」
などと、親臣を除く2年生達からツッコミを貰いつつ、こんな会話がなされていたのはアーサーとセオドアの知ぬこと。
「つか、アーサー、セオドア、皆にアレ渡したら? 」
「「「「「「「『アレ』? 」」」」」」」
真が言った言葉に、亜朗と親臣以外が『アレ』とは何かと聞き返す。
2人はニコッと笑うと、セオドアがガサッと袋を差し出した。
「ジョシュアに案内して貰ってサンダル買いに行った時、駄菓子を買ってきたんだよね♪」
「いっぱい買ってきて、さっきまで談話室で駄菓子パーティーやってたんだ♪それでコレは生徒会の皆さんの分♪是非受け取って欲しい♪」
セオドア、アーサーが言うと、朱那と頼が「ありがとー♪」と袋を受け取り、早速袋の中を漁り始めた。
口々に2人にお礼を言い「懐かし〜♪」と盛り上がる中、亜朗が2人に寄って行く。
「アート、テディ、どうもありがとう♪」
「どういたしまして♪」
「アロの好きな物があるといいんだけど」
「2人は何か好みのあった? 」
「俺はカバヤキサンタロー♪」
「俺はフガシ♪」
「いいねー♪どっちも俺も好きだよ♪」
にこやかに会話をする3人は、普通の友人という雰囲気。
そんな中、アーサーは亜朗の顔を見て何かを確認すると、少し申し訳なさそうな笑顔を作る。
「アロ」
「ん? 」
「今日一緒にディナーの予定だったけど、キャンセルしてもいいかな? 」
「ぇ、何か都合悪くなった? 」
ディナーと言っても、どこかの店に行くわけではなく、ただ食堂での晩御飯を一緒に食べるだけだが。
講堂からの帰りに、亜朗が「晩御飯一緒に食べよ♪」と、遠いイギリスから来た2人を気遣って誘ったのだ。
「あぁ。折角誘って貰ったのに申し訳ないのだけれど……」
「部屋の片付けとか? それなら俺も手伝うよ? 」
「いや、そうではない。アロはゆっくり友人達と─────────」
「一緒に食べても問題なくね? コース料理じゃないから時間とか気にしなくていいんだし。パッと食うなら20分もあれば充分じゃん? 」
アーサーの言葉を遮り真が言うと、朱羽も続く。
「極端に少食とかじゃないしょ? 」
「むしろ結構食べます」
「じゃあ飯食わない訳にいかないよね? 」
「ま、まぁ……そうですね……」
「用事あるにしてもご飯を抜くのは良くない。用事あるならゆっくりお喋りはできないかも知れないけど、同じテーブルでご飯食べたら? 」
「…………」
無言になってしまったアーサーの表情は明るくない。
そして、「……ここは遠回しじゃない言い方のほうが良さそうだな……」と呟き、亜朗を真っ直ぐに見据えた。
今日は講堂でのこと以外ほとんど絡んでいないのだから絶対そんなことはないのに、亜朗は自分が何かしてしまったのか、と不安そうな面持ちながらアーサーの視線を真っ直ぐに受け止める。
当然アーサーは亜朗のその不安に気付き、安心させるように柔らかく微笑んだ。
その微笑みは、亜朗を愛しく想っていることが周囲に伝わるほど優しく、慈愛に溢れている。
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