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「……じゃあ、アーサーとセオドアは俺と真と一緒に飯食おっか♪」
「「いいんですか? 」」
「勿論♪な、真♪」
「当然〜♪イギリスのさ、ティータイムの時に食べるお菓子のこと詳しく知りたいな♪俺の実家、パティスリーなんだ♪」
「「そうなんですね♪是非♪」」
「オリヴァーとジョシュアも一緒でしょ? 6人になるなら早いとこ席取りに行かなきゃ♪」
「とゆーわけで、俺らは行くね♪じゃーねー♪」
「「皆さん、また明日♪」」
朱羽と真に誘われ去って行ったアーサーとセオドアは、嬉しそうに見えた。
朱羽と真は、アーサーとセオドアの態度に感心していた。
今、自分の知り得る『亜朗を恋慕う』人達は、自分も含め、自分が亜朗に何かをしてあげたいという想いの方が強い。
幼馴染みである千尋達は勿論、幼馴染みという強敵に負けないという強い意志を持つ人達。
好いているからこそ、傍にいたい。
傍で守りたいと思っている。
それを否定する訳ではない。自分達もできることなら亜朗の近くにいたい。
それは自分が満足するのもそうだが、近くにいた方が亜朗にしてあげられることが多いと思っているから。
実際、何でもかんでも1人で抱え込みがちな亜朗だから、きちんと近くで見てあげて、亜朗が言葉や態度に出さない不安や辛さなどに気付いてあげられるようにしたい。
そう思うことこそ、亜朗を愛していると亜朗に伝える手段だと、そう思っている。
…………だけど、
この2人は自分達がいては亜朗が気を遣うだろうから、と亜朗からの晩御飯の誘いを断った。
確かに今の自分達や千尋達と比べれば気を遣うかも知れない。
でも、言うほど亜朗と2人の間に壁のようなものは感じなかった。
だからきっと、今日一緒にご飯を食べたとしても楽しく過ごせると思う。
多分本人達もそれは気付いているだろうに。そして亜朗の傍にいたいだろうに、断った。
そうしてまで亜朗の睡眠不足のことを心配し、気遣ってあげた。
自分のことより亜朗のこと。千尋達や自分達がそう思っていないとは言わないが、それでもやはり亜朗の傍にいたい気持ちの方が勝つ。
((……でもなんか……スゴく清々しい……))
同じことを思った朱羽と真が顔を見合わせた。
亜朗の為に、と身を引いた2人と一緒に自分達も引いた。
アーサーとセオドアと晩御飯を一緒に、と思ったのは勿論そうしたいと心から思ったのは本当。
でも、いつもの自分達であればあの場で「亜朗のご飯は俺が食べさせてあげる! 」とか「亜朗今日一緒に寝よ! 俺が温めてあげる! 」とか、亜朗に断られると分かっていても、亜朗にしてあげたいことを言って亜朗を困らせてしまっていただろう。
けれど、アーサーとセオドアと共にあの場をすんなり去った今、自分の胸に去来するのは清々しいほどの亜朗への愛だ。
亜朗を思うからこそ身を引いた。
亜朗を困らせなかった。
そして、亜朗にはきっと、いつもと違う自分達の態度がアーサーとセオドアと同じような想いからだと伝わったはず。
好きな子を困らせることなく、スムーズに大切にできたことがとても清々しく、こんなにも嬉しい。
こんなにも満たされる。
((……アーサーとセオドアは……亜朗と相性良い相手だな……))
そう思わずにはいられないほど、2人は遠くから亜朗を大切にできる。
近くにいても大切にできるし、離れていても大切に
できる。
甘やかすだけじゃない。厳しくしすぎることもない。
亜朗に合った、亜朗の為に1番良い選択を常にしてくれる。そんな気がする。
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