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「アーサーもセオドアも♪コレも食いな〜♪俺のオススメ〜♪」
「コレも美味いよ〜♪はいどーぞ♪」
「真も朱羽も……っ! 給仕は俺がするからっ!! 」
「アーサー様とセオドア様のことは我々がするから真先輩と朱羽先輩は自分のことだけをしていてください……っ!! 」
「ぃやオリヴァーもジョシュアうるさっ……」
「『給仕』じゃないじゃん。ただ美味しい物をシェアしてるだけだろぉ? 」
朱羽と真はお誘いした通りにアーサーとセオドア、そしてオリヴァーとジョシュア一緒に晩御飯を食べているのだが、楽しんで貰おうとメニューをシェアしようとしたところ、オリヴァーとジョシュアの『アーサー様セオドア様至上主義』が暴走している。
「ダメです! お二人のことは俺とオリヴァー先ぱ……ぃやもう皆の前だからって『先輩』付けんの面倒臭い! てことで俺とオリヴァーがやるんですっ!! 俺らの仕事取らないでください……っ!! ぅゔ〜……っ」
「「ぇ、泣いた? そして実は呼び捨て? 」」
「泣くなジョシュア! 泣いてはアーサー様とセオドア様のご尊顔が見えないぞ!? 」
「「ぇ〜……そこぉ……? 」」
あまりの暴走っぷりに、朱羽も真も呆れ顔。
しかしアーサーとセオドアは優しい笑顔で2人を見る。
「オリヴァーもジョシュアも♪給仕はいいから一緒に食べよう? 」
「「同じテーブルでなど……っ! 」」
セオドアに言われてもなお、椅子に座ろうとしない2人にアーサーの鋭い視線が送られる。
その鋭さに、朱羽と真は少し驚いた。
「2人とも。ここはガルガンド邸ではない。平等に学問を学ぶ場だろう? 」
「「は、はい……っ! 」」
「2人は俺やテディが言えば自分の授業をサボって側に仕えるのか? 」
「「当然でござ────────」」
「俺が皐月学園できちんと学ぶように、と言ったのに……? 」
「「っ……!! 」」
2人がアーサーとセオドアの役に立つ為に、と希望したとはいえ、実際こうして通うにあたり、きちんと当主アーサーの命を受けてのこと。
それなのに、アーサーとセオドアの為ならば自分の授業をサボると言ってしまうという失態を突かれ、2人は口を噤んでしまう。
存外早く、アーサーの厳しい一面を目にした食堂内の生徒達は若干ヒヤヒヤしながらオリヴァーとジョシュアを見守っている。
「「……も……っ、申し訳ございません……」」
「……俺はオリヴァーとジョシュアからの忠誠を受け取っているし、その忠誠心の高さは心から誇らしいと思っている。でも、だからって自分の学びを犠牲にしてまで、というのは許容できない」
「「……は、はい……申し訳ございません……」」
やや青褪めた顔色のオリヴァーとジョシュアが、僅かに震えながら頭を下げる。
するとアーサーとセオドアは同時に席を立つ。
「……だからね? 俺は授業中も側仕えをして欲しいとはモチロン望まないから、授業はそれぞれ自分の授業を受けるという普通のことをしよう? 」
「「はい……」」
「そうそう♪それぞれ、自分のを、ね♪」
グイ、と肩を押され、オリヴァーとジョシュアは用意されていた席に座らされる。
「本邸ではそうもいかないのは理解している。でも皐月学園にいる時くらいは一緒にご飯を食べよう? ね♪」
「俺もアートも自分のは自分でするから、オリヴァーもジョシュアも自分のことだけでいいってこと♪」
「「アーサー様……セオドア様……」」
それでもオロオロする2人に、アーサーとセオドアはニッコリと笑うと顔を見合わせた。
「どうしようテディ」
「どうしたアート」
「ウチのオリヴァーとジョシュアが一緒にご飯を食べることに納得してくれないんだ……」
「それは悲しいな……」
「「か……っ、『悲しい』……っ!? 」」
明らかにただの演技である。
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