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その後、亜朗達いつもの6人が食堂に来た時、アーサー達は丁度食事が終わったタイミング。
真が「ここ空くから座りな〜♪」と亜朗達に呼び掛けると、亜朗達は「ありがとうございます♪」と入れ替わりで席に着く。
アーサーとセオドアに好感を持った生徒達が、亜朗とどう絡むのかと見守る中、アーサーもセオドアも「どうぞごゆっくり♪」と6人に一言声をかけると、千尋から釉と湊斗を紹介され、にこやかに挨拶を済ませた。
去り際に亜朗に「おやすみ♪」とニッコリ微笑んだものの、さっさと食堂から出て行ってしまう。
あっさりとした態度ではあるが、その態度こそが亜朗への愛情だということを見守っていた生徒達は理解し、アーサーとセオドアらしさに『うんうん』と納得したかのように頷いていた。
――――――――――――――――
その日の夜。
亜朗は数日振りにベッドに入ってすぐ、睡魔に襲われていた。
睡魔不足である嘘の理由を千尋達に伝えた時、各個人部屋にも付いている暖房設備の設定温度を上げた方が良い、と提案された。
嘘を吐いたことが心苦しく、申し訳ない気持ちだったが、それでも心配してくれることは素直に嬉しいと思った。
アーサーとセオドアにも嘘の理由を伝えてしまった時、セオドアは湯たんぽをプレゼントしてくれた。
勿論その時も心苦しく思ったし、申し訳ないとも思った。
そしてやはり、嬉しいと思った。
湯たんぽを貰いアートとセオドアが去ったあと、千尋達が「そうか……湯たんぽって手もあったか……」と真面目な顔で呟いていたことを思い出し、僅かな笑みが溢れる。
そしてセオドアの半袖姿を思い出して、「ふ……っ♪」と声が漏れた。
セオドアから貰った湯たんぽを抱え、猫のように丸まってみる。
「……ぅ〜……あったかい……♪」
亜朗のその声は、とても柔らかく、とてもリラックスしていた。
11年振りに再会したアーサーとセオドアは、自分の記憶の中の姿と良い意味で似ても似つかないほどに成長していた。
凛々しく、男らしく、精悍な姿。
物腰が柔らかく、優しく、紳士的であるかと思えば愛を伝える時はほんの少しの情熱も感じた。
だけど、こちらを気遣う姿勢は徹底していて安心感がある。
千尋達や真達のように、愛情をぶつけてくるのも、困惑することもあるけど嫌ではない。
けれども、2人のように優しく柔らかく愛情を持って見守られるのは、素直に心地が好かった。
近付いて来たかと思えば、こちらの為にあっさり引いて行く。
でも離れても、離れる時にくれた優しさと思い遣りは心に残り、それはとても心地の好い空気となり、自分を包み込んでくれる。
改めて湯たんぽのお礼を伝えようとして気付く。
アーサーとセオドアの連絡先を聞いてなかったことに。
「……明日……聞きに、いこ……♪」
そう呟いて、亜朗は久し振りにあっという間に眠りに落ちて行った……──────────
ところ変わって、ここはアーサーとセオドアの2人部屋。
それぞれパソコンで仕事をこなしている。
時差がある為、現在日本は23時であるがイギリスは14時。
早々に返事をしなければならない案件に目を通し、返事を送る。
「……テディ……」
「ぅん? 」
「アロの睡眠不足の本当の原因……何なんだろうな……」
「ぅ〜ん……今日だけじゃ判断しづらい」
「うん、だよなぁ……。様子を見るしかないか」
「だな。それにさ、アート」
「ん? 」
「俺、今重要なことに気付いたんだけどさ」
「何? 何かそっちの仕事トラブル発生? 」
「いや……」
「じゃあ何? 」
「……アロと連絡先交換してない……」
「…………俺らポンコツじゃん……」
「な……」
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