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その『理由』、聞いてもいいかな?
聞くだけ聞いてみようかな。言えない理由なら、「言えない」ってハッキリ言ってくれるだろうし……。
「アート、テディ。その『理由』って聞いてもいいもの? 」
「「構わないよ♪」」
笑顔でそう言ってくれたアートとテディに、俺も笑顔で「ありがとう♪」と返す。
そしてアートが物凄い速さでメールを打ちながら「ええとね、」と早速話し出す。
……アート、スゴい器用だ……。
「コンプトンは俺達と同じイングランドの貴族で、レジー様やイーサン様、ヘンリーと同じ伯爵家。我がガルガンド家とはそれなりに付き合いがある」
ふむふむ、と頷く。
じゃあガルガンド家と付き合いの長い、レジー先輩のアースキン家とも付き合いがあるのかな?
「そのコンプトン家は2年前に先代がご病気を理由に引退なさって、今は長男のリチャード様が当主の座に就いてるんだけど……」
そこで言葉を区切り、アートとテディは「ハァ……」て溜め息を1つ。
「な、何かそのリチャードさんに問題でもあるの……? 」
溜め息の理由はそういうことだろう。
俺が聞くと、アートは切なそうな顔をする。
何故、『切なそうな顔』なのかは分からない。
問題のある人物に対して、『呆れ』とか『嫌悪』じゃなくて『切ない』ってどういうこと?
「コンプトン卿であるリチャード様は……」
「「『リチャード様は』……? 」」
またチカ会長と俺のタイミングが揃った。嬉しい♪
「残念なほど、商売が下手すぎるんだ」
「「………………」」
言葉を失うチカ会長と俺。
ぃや、言葉を失っているのは、そう言ったあとのアートとテディもだ。
ぁ。何気にこっちの会話を聞いてた生徒が何人か笑ってる。
吹き出しそうになったのを堪えたせいで、「ゲフゲフ……ゲヘ……っ! 」ってちょっと気持ち悪い感じになってる。
「……だから、」
アートが言葉を取り戻したよ。
「予想ではあるけど、今回の件も多分リチャード様が色んな意味で下手を打ったんだと思う……」
アートがそう言った時、アートのスマホが物凄い勢いで震え出した。
ぃや。スマホのバイブに『勢い良く』なんて設定がないのは分かってる。
分かってるのに、何故が今のアートのスマホは何かを訴えるように『勢い良く』震えてる。意思を持ってるみたいだ……。
画面に出た名前を確認したアートは「ぇ、リチャード様だ……」と呟いた。
…………おかしいな……イギリスは今、深夜3時くらいのはずだけど……。
リチャードさん……大丈夫……?
テディにチラッと視線を送ったアートは、テディが頷いたのを見てテディにも聞こえるように通話をスピーカーモードで開始する。
「(もしもしリチャードさ─────────)」
「(アーサー様ァァァァァァァァァっ!! )」
「(…………。どうしました? )」
開口一番大きな声で名前を呼ばれ、一瞬遠い目をしたものの、アートは見えていないながらも笑顔で対応。
「(ごご、ごめ……っ! このメールの意味、ぁ、メール今見たんだけど、そのっ、)」
「(リチャード様。落ち着いてください)」
「(ぁ……っ、ご、ごめん……! )」
「(そちらは夜中の3時過ぎですよね? 起きてたんですか? )」
「(ぁ、……ぁはは♪仕事が終わらなくて……)」
……夜中まで仕事が終わらないとは……。
ホントにこの人仕事出来ない人だ……。
「(またご無理なさってるのですか? 睡眠は大事ですよ? しっかり睡眠を摂らないと、頭が働かないでしょう? )」
「(ご、ごめんね……そ、そうなんだけど……)」
……う〜ん……リチャードさんって何歳なんだろ?
アートとはそんなに離れてなさそうだけど……。
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