*** ランチタイム ***

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「(ぁ! ボクの睡眠時間のことより、ア、アーサー様からのこのメール……! )」 「(あぁ。内容通りですよ)」 「(ホ、ホントに申し訳ない……っ! まさかアーサー様の通う皐月学園に納品する予定だったツリーだったなんて……っ! も、申し訳なさすぎて地下室に引き篭もりたい……)」 「(引き篭もらないでください)」 うん。当主様が引き篭もっちゃダメだ。 で、詳細としては、リチャードさんはコンプトン家が資金援助をしている小児病院に贈るクリスマスツリーを手配するのをすっかり忘れていた。 テディ曰く、昔からのことなのに何故すっかり忘れられるのか不思議でならないらしい。 とにかくそこで慌てたリチャードさんがツリーの手配をしようとして、俺らも依頼したあの業者に辿り着いたそう。 しかもリチャードさん、めちゃくちゃ吹っ掛けられてた……。皐月が払う予定だった金額の2.5倍。 吹っ掛けたその金額を払うって言われたら、業者の方もそっちに売りたいって思うよね……。 だから多分、業者さんも最初はリチャードさんに売るつもりがなかったからこそ、その金額を提示したんだろうなって思った。チカ会長も「多分そうですね」って。 まぁでも、結果的にはお金に目が眩んで、リチャードさんに売ることにしたんだから、『仕方ない』で済ますつもりはない。ってテディがまた怒ってた。 「(─────────だからツリーは皐月学園の方に……! )」 「(モチロンそのつもりです。でも、リチャード様の方は? 他に当てはあるのですか? )」 「(っ、ぃ、いや……正直もうこの時期だし、当てはない……かな……)」 リチャードさんの声が途端に沈む。 その声を聞いたら、俺の中にツリーは病院の子供たちに譲ってあげたいという思いがムクムクしてきた。 チカ会長をチラッと見ると、チカ会長は難しい顔で俺を見てくる。 「正直僕も、子供たちに譲ってもいいかな、とは思ってます」 「はい、俺もです」 「でもそれは飽くまで僕と亜朗くんの個人的意見です。もし本当に譲るなら、一応全生徒に確認を取るべきでしょうし、まぁ皆『いいよ』と言ってくれるとは思いますが」 「はい」 「けど1番の問題はそこじゃないんです」 「予算の問題、ですよね……」 「そうです。ツリーの購入に充てるはずだった金額を、じゃあ次はどこに振るのか……それを考えるのは物凄く大変です」 「それなりの大きな金額ですからね……」 「来年に繰り越すにしても、来年は皐月学園100周年ですからね……寄付が凄いことになるのは目に見えてますし……」 「キッツイですね……」 思わず『キツイ』にちっちゃい『ッ』入れちゃったくらい、ホントにキッツイ話しなんだよね……。 チカ会長と俺が、溜め息というほどではないけど、さてどうしたものかと「ふ〜……」と細い息を吐いた時、その会話を聞いていたテディが「大丈夫だ心配ない♪」と笑った。 どういうことかと、チカ会長と俺がテディを見ると、テディは片手をちょっと上げてアートにリチャードさんとの会話に入る、という合図を送る。 「(リチャード様、セオドアです)」 「(あ、やはりセオドア様もいらしたんですね)」 「(えぇ。それで、ツリーの代案として俺の提案を1つ聞いていただけますか? )」 「(!! も、モチロンです……っ! )」 「(対象が子供たちということなので、スイーツののツリーなどはいかがでしょう? )」 「(『スイーツのツリー』……ですか? )」 !! いい! いいと思う! 子供たち喜びそう! ツリーの形のケーキとか! それなら外に飾るわけにはいかないし、病院の中に入るサイズで充分だもんね♪
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