*** 『TAKATORI company』 side 宝仙 ***

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*** 『TAKATORI company』 side 宝仙 ***

………………。 さて、もうそろそろいい加減腹括って亜朗のとこに向かわなきゃな……。 そう思った途端、勝手に頬が少し引きつる。 悟くんと話しをして。 それは俺が数年振りに会った悟くんと話しをしたかったのも勿論あるが…………この間に、世から『亜朗が起きた』という連絡が来てくれないか……と、思っていたのもあったりする。 眠ったまま。 起きない。 大好きな千尋が声をかけても。 大好きな三つ子が泣いてても。 起きない。 完全に異常事態だ。 「……藤宮先生……? 」 目の前の現実が辛く、心を閉ざし、眠る事で自分の心を守ろうとする。自己防衛本能。 昨日の亜朗の抱えていた気持ち──────過程すら分からないのに、ただ『傷付けた』と傷付いてた───────から、あの後話しがどうなったかは分からないが、きっと亜朗もなんじゃないか……そう思っていた。 外科、整形、内科の専門医の認定は貰ってるが精神科は完全に専門外。 だけど精神科も抱える病院の院長として、そういう患者さんも今まで何人かは見てきた。 けど、当たり前だが、自分の大切な孫がとなると─────────── 「……怖いんだ……」 情けない事に、自分の年齢の3分の1の年齢の子の前で弱音を吐いてしまう。 数多の患者を診て、そして見てきた医者だけど……、 ……俺だって、1人の『おじいちゃん』なんだよ……。 「ぇ……? 藤宮、先生……? 」 「っ、……怖くて、仕方ない……」 「……セ、ンセ……? 亜朗……ホントに、どうしたん、ですか……? 」 「……亜朗が起きない。目を覚まさない。千尋が声をかけても、三つ子が泣いてても……全く起きる気配がない、んだ……」 「っ!?!??! 」 手で片眼を覆いながら、僅かに俯いてしまう。 …………亜朗……ジイちゃん、怖いよ……。 「藤宮先生、早く行きましょう」 俺の二の腕を掴み引っ張り、さっき出てきたドアを再び潜る悟くん。 「ちょっと、さ、悟くん……!? 」 慌てて悟くんを呼んでも、悟くんの足は止まらない。 「あれ? 陣内くんどうしたの? 忘れも─────ぁ、その方は……」 「村瀬さん! 連絡きてると思いますけど、この方藤宮先生です! 亜朗のとこまで案内します! 」 「ぇ、それ僕の仕ご──────」 「案・内・し・ま・すッッ!! 」 「……オネガイシマス……」 悟くん強い。 悟くんの勢いに負けた寮監督らしき方に「ふ、藤宮総合病院の藤宮 宝仙です……! スミマセンお邪魔します……! 」と、病院で首から提げてる写真付きの身分証を掲げたけど、悟くんにグイグイ引っ張られてるのでちゃんと確認して貰えた自信はない。 悟くんといるから不審者で通報はされないと思うが、皐月のセキュリティは恐ろしいからな……。 「あ、悟くん、亜朗は今自分の部屋じゃなくて───────」 「大丈夫です知ってます。の部屋ですよね? 」 寮のドアを潜った時のあの勢いが落ち着いた悟くんと共にエレベーターに乗り込む。 …………『昨日話しをした先輩』って……、もしかして悟くんは……。 「……悟くん、もしかして亜朗に何があったか……知ってる……? 」 俺がそう聞くと、悟くんは申し訳なさそうな視線を向けてきた。
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