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教授の正体
「私は吸血鬼です」
「それは知ってるよ!」
「吸血鬼は変温動物です」
「あー、なんかそんなこと言ってたね」
「変温動物は外気温で体温が変わります。ちなみに今この部屋の室温は5度です」
「そう! めっちゃ寒いよね! だからあっためてあげようと……」
「そこです!」
教授は加奈子の言葉を遮った。
「私は今部屋と同じ5度の体温なんですよ。それに適応しているんです。そこへ36度のあなたが突然抱きついてきた! これがどういうことだか分かりますか?」
「え? 暖かいってこと?」
「違う! その差30度、つまりあなた方人間に65度の熱湯を浴びせるようなものです! あなた、私を殺す気ですか?」
「へー、そうなんだ。でも昼間は平気だったじゃん。見てたんだから。奈美に腕組まれてデレデレしてるとこ」
「デレデレなどしていませんが……昼間は外気温が高いから、人間との体温差も少なくなるんですよ」
「えー? だったら部屋を暖かくすればいいんじゃないの?」
「温度が低い方がエネルギー効率がいいんです」
「もー、ああ言えばこう言うんだから」
「そっくりそのままお返しします! そもそも何でこんな時間にこんなところにいるんですか。早く帰りなさい」
「つれないなぁ。花の女子大生が操を捧げに来てるって言うのに」
「間に合ってます。お帰りください」
教授のつれない態度に加奈子は不服そうにぼやいた。
「ほんっとに冷たいんだから! この冷血教授!」
「そうです。かつて変温動物は冷血動物と呼ばれていましたが今ではあまり使われませんね」
生物学のうんちくと共に加奈子は部屋を追い出された。
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