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教授と加奈子
「だから、何度いったら分かるんです?」
研究室に怒声が響く。
「そんなに怒んなくてもいいじゃん」
加奈子は口を尖らせた。
教授はキャスター付き椅子の背もたれをグイグイ押して加奈子を引き離すと、ずり落ちたメガネをクイッとかけ直した。
「あ、その仕草も好き!」
加奈子が抱きつこうとするのを教授はヒラリとかわす。
「何度も同じ手は食らいませんよっ!」
「もー、普通女子大生に抱きつかれたら喜ぶところでしょ?」
「あなた、私の説明本当に聞いてましたか?」
教授は死活問題なのでもう一度言いますよと前置きをして話し出した。
「あなたに吸血鬼であることがばれたのは本当に致命的なミスでしたよ」
「大丈夫!私バリアフリーだから」
「せめてダイバーシティ&インクルージョンと言ってください」
「えー? 何それ? 生物学の教授なのに英語もできるんだね」
「このくらいは一般教養です」
「いやいや私、長いのは無理! おぼわんないもん」
「あなた、どうやってうちの大学の入試を突破したんですか?」
教授は大きなため息をつきながら祈るように言った。
「仕方ありませんね。簡単に説明しますので今度こそ覚えてください」
子供をあやすようにゆっくりと教授は話を切り出した。
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