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誰かに、あの画を受け継いでほしい。残念ながら絵が描けない僕ではとても出来そうにないから、他の誰かに。そうしないと、あの画は消えてしまう。
そういう意味では――――僕らがものづくりをしていてよかったと思えるのだ。
新しい画が生み出されなくても、彼のあの美しい世界は、フィルムの中に織り込まれる。ネガに焼き付く。彼の画が、映写機の中で眠り続ける。
そうしてフィルムに包まれたその遺伝子が、僕らが消え去った後の地球のどこかで、見知らぬ誰かに辿り着けたなら。
きっとそれ以上の幸せはないのだろう。
「……ん? ぬーさん? それ食べないの?」
元気に4切れ目を平らげた彼が、僕のを指差して笑う。
「……うん。もういいや。……君にあげるよ」
「いいのか?」
「どうぞどうぞ。一杯食べて、元気つけてよ」
「あはは。ありがとう」
――――だから今は、君の新しい世界を僕に見せてね、かっち。
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