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ケーキと映画は似ている
蝋燭の焦げた臭いが、まだスタジオに微かに残っていた。
「あぁお帰り、ぬーさん。ケーキ切っといたよ」
「あ、かっちごめんね。疲れてるのに、わざわざそんなことさせて。……皆はもう帰った?」
パイプ椅子に腰を下ろす。先程まで沢山の人がいたスタジオも、今は僕とかっちしかいない。CG用の緑のスクリーンが妙に大きく見える。
「あぁ。撮影班は倉庫に機材を置いて帰ってったし、役者陣もしばらくここの外で喋ってたけど、もういい時間だからって帰った。明日もあるからな」
既に照明は消され、カメラは片付けられていた。それだけで、どこかもの寂しく感じられた。
「君だって帰ってよかったのに。ケーキなら有難くいただいたんだからさ。わざわざ僕に付き合わなくても」
「いいんだよ、そんなこと。それよりぬーさん、あまり無理するなよ?」
「その言葉、そのまま返させて貰うよ。君だって今日撮影した映像、見直すために残ったんでしょ?」
バレたか、と渡された巨大なホールケーキの一切れ。茶色いチョコの上で赤いイチゴが光る。……まだ半分も食べられていない。
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