ケーキと映画は似ている

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「そういや俺たちの周りじゃ、そういう浮わついた話は聞かないな。ぬーさんもたけぽんもアキも皆音沙汰なしだよな」 「いつもこの面子でいるからじゃない? そういう君は、そんな話はないの?」  そう言われると、かっちは大きく笑った。 「あるわけないだろ? 俺はやっぱり仕事人間だからさー、そういうのに興味持てないんだよな。多分一生結婚できないと思うわ。だから君たちの誰かがやる結婚式に呼んで欲しいな」 「そうか。君がそう言うなら仕方ないけど、君が結婚できないなら、多分僕らは皆無理だね」 「それは残念だな。友人代表としてスピーチでもしようかって考えていたのに」  僕は何でだろうか、彼の言葉が少し悲しかった。彼のあの技を受け継げる人が1人消えたことが、悲しかったのだ。  僕は彼の作る美しい画が好きだった。10年前、パソコンの中に描かれていく水の斑紋を見た時、僕は彼の世界に心を奪われた。奪われて、今僕はここにいる。もし、僕にそういう技術があれば、彼の弟子になって学びたいと思えるほど――――美しかった。  もし、彼が死んだら、あの美しい水の流れは消え去ってしまう。多分僕はそれが嫌なんだ。  彼に息子さんや娘さんがいれば、それを受け継げたかもしれない。そう思うと、その可能性がなくなることが少し悲しいのだ。
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