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私が仕事へ打ち込んでいた間、詠士が主真の相手をしてくれていたことをひと月前ほどに知ったばかり。
確かな絆を感じて嬉しさと、少しは私も頼って欲しかったという悔しさが込み上げる。
顔には出していないのに、詠士は私を横目でチラリと見てから苦笑した。
「俺は海外で仕事しているおかげで、辛うじて英語を教えられるだけだ。他の教科なんてまず無理だぞ。そもそも俺たちの頃と今で、内容がだいぶ変わっているからな」
「詠士、フォローは感謝するが……今の教科内容なんて、私は一切知らないんだ……」
沙綾を亡くしてからの人生が、どれだけ余裕なく、視野も狭かったことかを痛感してしまう。
うなだれて落ち込む私の背中を、詠士と主真が両隣から叩いた。
「知らなかったなら、これから知れば良いだけだ。そう落ち込むな」
「そうそう。父さんはそれだけ仕事に必死だった、ってことだから。自慢の父さんだよ」
……息が合ってるな、君たちは。そして揃って私を泣かせようとしないでくれ。
目頭が熱くなるのをグッと堪えながら、私はどうにか微笑みを浮かべた。
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