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後日談1 贅沢な時間
「お帰り父さん。叔父さん」
帰国して手荷物の受取場を出てすぐ、主真がにこやかに手を振って私たちを迎えてくれた。
隣で荷物を引いていた詠士が、私の肩をポンと叩く。
目配せして促され、私は詠士より先に主真の元へ向かった。
「主真、この大事な時に私のワガママを押し付けて悪かった。変わりはないか?」
「まったく問題なかったよ。夏休みの宿題はしっかり終わらせて提出したし、無事に二学期始められたから。休み明けのテストも点数取れたし」
胸を張ってそう言ってくれる主真が頼もしい。
私はずっと自分のことで精一杯で、最低限のことしか主真にしてあげられなかったというのに。
立派に成長したものだと密かに感動していると、遅れてやって来た詠士が「よお主真」と手を上げた。
「英語のテストはどうだった? チャットアプリで俺が教えたんだから、満点取れただろ?」
「無理言わないでよ、詠士叔父さん。まともに百点取れるのは小学生までだから……でも全教科の中で一番良い点数だった」
当たり前の空気で気軽にやり取りをする主真と詠士を、私は軽く動揺しながら二人を見交わす。
主真、詠士に勉強を教えてもらっていたのか?!
いつの間に……私は一度も教えを請われたことがないのだが。
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