後日談1 贅沢な時間

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「ありがとう……さあ、少し遅くなったが、お昼を食べに行こうか」 「うん。父さんはどこがいいの?」 「そうだな、やっぱり蕎麦が――」 「父さんってば、外食になると蕎麦ばっかりだ。他も食べようよ」  私のリクエストを主真が即行で潰してくる。しかし、 「あー、悪いが主真、俺も今は蕎麦がいい」 「えっ、詠士叔父さんも?!」 「あっちだと俺たちが満足できる蕎麦がないんだよ。和食も現地の味付けにアレンジされてるし……薄味の和食が恋しい」  援護射撃をもらい、私は詠士と顔を見合わせて互いに頷き合って結託する。  二対一。ため息をつきながら主真は肩をすくめた。 「分かったよ。父さんたちのために今日は我慢するよ」 「すまないな、主真」 「いいって父さん。あっちに行く前よりも元気そうで良かった」  私と詠士の顔を見て、主真がにっこりと笑う。  ささやかな日常のやり取りだが、私たちの関係を知った上でのことだ。  これが当たり前のことだと未だに思えず、私の荷物を運んでくれる主真に感謝するばかりだった。
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