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◇ ◇ ◇
三人で家族の時間を夕方まで過ごした後、主真を桜間の伯母の家へ届け、私たちは詠士の生家である古民家へと帰宅した。
帰国してようやく再会できたというのに、主真と短い時間しかいられず申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
しかし明日からは平日で主真には学校がある。
そして帰宅した家は――。
「ははっ、やっぱり埃っぽくなってるな」
玄関を開けた途端、むせたくなるような臭いに出迎えられ、詠士が手をパタパタと振る。
中へ上がってカチリと電灯を点けてみれば、一見すると変わりがないように感じる。
だが廊下を見れば私たちの足跡がうっすらと残り、埃が溜まっているのが分かった。
さすがにこんな所へ主真を連れてくる訳にはいかない。
二人で家の中を回り、各部屋の様子を見ながら私はため息をつく。
「これは今から掃除しないとな」
「下はロボット掃除機に任せればいいが、テーブルや布団はなあ。あと――」
詠士は家の中心にある大広間へ足を向ける。
二十畳ほどある広々とした部屋は畳敷きで天井がとても高い。
夏場は涼しい場所だが、夏を過ぎた今は少し肌寒さを覚える。冬になると大変そうだ。
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