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ちなみに、去年のバレンタインも達樹先輩にチョコを渡そうと準備はしていた。
だけど、高校生になった先輩は想像以上に女の子にモテていて。学年の違うあたしには、学校で先輩に声をかけるチャンスすらなく、用意したチョコは丸ごと全て、あたしの糖分となってしまった。
だから今年のバレンタインは渡しそびれたりしないように。
「朝早くこっそり靴箱にチョコを入れとく作戦」で挑むことに決めたのだ。これならきっと、あたしのチョコは先輩の手に届く。
周囲に誰もいないのを確かめて、先輩の靴箱の蓋を開く。ドキドキしながら、カバンから出したチョコを靴箱に入れたそのとき。
「だーれだ?」
ぱっと視界が奪われて、目の前が真っ暗になった。
「え、どうして……」
振り向かなくても、目隠しする手を退けなくても、声を聞いただけで、すぐ後ろにいるのが達樹先輩だとわかる。
急いで下駄箱の蓋を閉めて、何から誤魔化そうかと焦っていると、あたしの目隠しを外した達樹先輩が背中からぎゅっと悪戯に抱きしめてきた。
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