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高校2年の春。峯沢洋平のクラスに1人の転校生がやってきた。
「……佐藤です。」
耳を澄まさないと聞こえないほどの小さい声でぼそっと挨拶をする転校生。
その転校生「佐藤龍二郎」は、身長は185センチ程の高身長だが、顔までかかる髪の毛と、度のキツいメガネのせいで傍から見ると根暗な陰キャ感満載の男子生徒だった。
担任から指定された空いている席に座った彼のカバンからは、アニメ「ミルキー☆ホイップガールズ」のモネラちゃん(ツインテールの妹キャラ)の印刷されているシャープペンシル、消しゴム、クリアファイル……諸々が次から次へと取り出され、まるで自分の聖域に侵入するなと言わんばかりに彼の机を埋めつくした。
洋平は「転校生なんて珍しいなー」くらいにしか思っていなかったが、明らかに周りの席の、特に女子達はその瞬間から転校生佐藤龍二郎を異様な人物として見なしていた。
◇◇
新学期が始まって1週間。
新しいクラスでみんなが慣れ始めた頃、洋平のクラスではあの異端視の龍二郎は完全な奇人扱いだった。
龍二郎は毎日人目もはばからず机には推しキャラのグッズを並べ立て、ブックカバーをしない18禁の同人誌を朝の時間に読み漁る。
クラスメイトが話しかけても基本は無視。
唯一話すのは推しキャラのアニメ話しをオタク達が話しているのに無理やり割り込む時だけ。
転校して1週間の龍二郎の様子に周りもだいぶ引いて距離を置いていた。
「見て、またエロ本読んでる。あの転校生まじでヤバいよね。ちょっと色んな意味で怖くて関わりたくない。」
「髪も長くて清潔感ないし、度が強い瓶裏みたいなメガネもキモいし、そもそもオタク出しすぎだしコミュ障だし、良いのは身長が高いところくらいよね。」
「もはやそれすらも良いとは思えないわ、私。」
「それなーw」
周りの女子もかなり言いたい放題で、本人にも聞こえそうなトーンで話をしていたが、当の本人は全く気にしていないようで相変わらずいかがわしいタイトルの本を平然と読んでいた。
そんな談議が洋平の席の近くで行われており、休み時間で居眠りをしていた寝起きのぼーっとした頭にも入ってきた。
-確かに変わったヤツかもしれないけど特に危害もないし、放っておけばいいのにな。せめて声のボリューム下げろよ。-
まだ眠り足りない洋平の睡眠を邪魔する音量の悪口に洋平は少し心で悪態をついた。
そしてそのまま再び眠りについた。
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