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日曜日の朝、洋平はついにこの日が来たのか…と気持ちが沈みそうになるのを何とか紛らわせるため、朝食のトーストに勢いよく齧り付く。
昨日は1日中龍二郎と一緒にいた。
-いつもの佐藤、新しい佐藤、意外な佐藤、カッコイイ佐藤、強い佐藤……。昨日だけでも色々な佐藤を見れた1日だったな…。-
昨日家から帰った後もずっとお互い連絡を取り続けた。
いつの間にか毎日の連絡は日課になっていた。
連絡を見返してぼんやり考える。
-佐藤の隣は居心地が良くて、楽しくて安心する…。でも、これは好きなのかな?仮に好きだとして、恋人っぽいことはしたいかな…。
デートは……したい。
キスも……したい。
それ以上のことは……………。
あーーここなんだよ、ここ!!-
洋平は頭を抱える。
結局、引っかかるポイントは最初と変わらなかった。
このポイントをどる捉えるか、そこに答えがある気がした。
-そもそも動画とかでしか見たことないそういう行為をリアルに想像出来ない…。ましてや男同士とか未知すぎて…。-
洋平は性行為への興味は若い男として人並みにはあったが、男同士という点に底が知れない不安からくる恐怖の方が勝っていた。
朝食を食べ終わり、リビングでぼーっと内容の入らないテレビを流し見していると、スマホに連絡が入る。
送り主は龍二郎であった。
『おはよ。今日勝手に夜の時間指定してごめん』
毎朝律儀に来るメッセージに洋平も習慣のようにせかせかと返信する。
『おはよー、別にいいよ。昼間予定あるの?』
数分後に龍二郎から返信が来る。
『今日ミルガル(※ミルキー☆ホイップガールズ)のファンイベントあるから』
その用事より後回しにされるんかい!とツッコミたくなった洋平は何とか自分を抑える。
『そっか。楽しんで!』
『3次元の1番は洋平だから妬くなよ』
『そのフォロー別にいらんわ』
その返信後、メッセージは未読のままだった。
-こんなやり取りも、もしかしたら今日が最後になるかもしれないのか…。-
洋平はリビングのソファに寝そべりながら、何とか答えを見つけようと藻掻く。
-そもそも、俺はセックスに関しての知識が無さすぎるからこんなに悩んでるんじゃないか!?よし、ここは勉強の意味を兼ねて部屋に篭って知識を1から入れ直そう!-
それらしき理由をつけ下心を正当化し、洋平は部屋に戻る。
ベッドの上に寝転がりながらスマホでまずはセックスについて調べる。
-うーん…映像じゃなくても、やっぱ妙な気にはなるよな…。俺、男の子だし。あー、この子可愛い。……とか思ってるって時点でやっぱ性的対象は女子なんだよな…。-
熱くなる体を持て余しながら調べていると
<前戯のキスが勝負の分かれ道!>
なんていう男性向けに書かれた記事が目にとまる。
興味本位でその記事を読む。
<キスは雰囲気が大事。雰囲気作りが結果を決める。>
<キス出来たら最後まで出来る可能性は格段に上がる>
<家→キス→エッチが黄金ルート>
<まずはキスで相手の外堀を埋めて、セックスへのハードルを下げよう>
その記事の内容を見るとムラムラからくる体の熱さを塗り替える程の恥ずかしさで体が熱くなった。
-え、まって。キスってそういうもんなの!?俺、普通に佐藤とのキスは大丈夫って思ってたけど…キスしたら……最後までやるのOKって感じに受け取られるのね!?世間では!…どうしよう…。じゃあ佐藤もそのつもりだったのかな…。-
洋平は思わずスマホを枕の下に隠す。
枕に顔を埋め洋平は恥ずかしさから一旦思考を放棄して冷静になろうと試みる。
その時、洋平のスマホが鳴り響き思わずビクッと体を浮かすほど驚く。
慌てて液晶に目をやると、電話の相手は宗方だった。
「…も、もしもし…」
『おつー。今何してるの?』
「家にいるけど……」
洋平はやましい行為を見抜かれた気がして少し声色を強ばらせる。
『まだ結果伝えてないの?』
宗方の問いに本来の目的を思い出し、洋平は今度は少し暗い気持ちになる。
「あー…今日の夜に言うことになった。」
『そっか、ならまだ間に合うな。』
「え?何が?」
『お前へのアドバイス』
宗方はいつものように飄々とした声色で電話越しに話し出す。
『俺お節介焼くタイプじゃないけど、珍しく峯沢が悩んでるっぽかったから優しい友人としてお節介焼くことにした、有難く思えよ。』
相変わらず宗方の言い方には少し反感を持つが、珍しく電話までしてきてくれたのは有難く素直に感謝する。
「ありがとう。今も絶賛悩み中だよ…」
『まず大前提として、お前は恋愛が下手くそだ。』
「え?いきなりディスりですか?」
『ここをお前が理解しないとお前も今後困るだろうし、俺も相談役ばかりさせられて面倒臭いからな。』
洋平はムスッとしながらも、素直に宗方の言葉に耳を貸す。
「相談役って?」
『お前って空気読めないじゃん?前言ったとおり距離感おかしいし。その距離感で来られると普通の人間は勘違いしちゃうってのは言ったよな。それで、まんまと峯沢のこと好きになった女の子に俺、何人も相談受けてるの。実はモテてたんだよ、良かったな峯沢。』
「え!?そうだったの!?もっと早く教えてくれよ!!」
『そういうのに全く気づいていない所もお前が恋愛下手な理由の1つだよ。』
少し浮かれる洋平に釘を刺すようにさらに宗方はダメ出しを続ける。
『お前は特に相手からの好意を受け取るセンサーが弱い。もっと相手のこと見てやらないとダメだ。これは誰かと付き合った時に必要になるからな。』
「…そうか。確かに好きって言われてもよく理解出来てないかも、俺…。」
『あと』
さらに話続けようとする宗方に少し焦り洋平は問いかける。
「え!?まだあるの?」
『まだまだある。』
「まじか…。俺全然ダメってことね…。今日は素直に聞きます…。」
『おう、そうしろ。あとは奥手で自分から動けない所も男としてマイナスだよな。いつも考えすぎて動けないだろ。』
「うん…。嫌われるの恐いし、自分からいくの苦手…。」
『自信が無いんだろうな。』
「ゔっ…お前結構グサグサ言うのな…。」
痛いところを付かれて洋平は少し泣きたくなる。
『自信ない理由として、恋愛経験が少ないし考えすぎるしが悪循環になってるんだよ。』
「そうなんだよな…。結局考えすぎて行動出来ないから恋愛の経験も少ないんだよな……って、俺お前に色々暴かれて泣きそうだわ…」
『その倍はお前に振り回されて泣きたい奴らがいたんだよ。で、俺が言いたいこととしては、』
「うん」
『相手の気持ちをもっと考えて観察すること。そしてお前はそれが今現在だと出来ていないってこと。あとは考えすぎないで行動してみるのも問題解決の手段になるってこと。』
「…なるほど。」
『……まあ、伝わったかわからないけど。いっその事痛い目見た方が身に染みるかもな。』
「痛い目は見たくない。」
『とりあえず、その上で佐藤への返答考えろよ。別に無理矢理お前らをくっつける気もないし引き離す気もないから。俺は今回あくまでも峯沢に対してお節介焼いてるだけだから。じゃ、しっかり考えろよー。俺はこれからデートいってきまーす』
「…ありがとう。デート楽しんで下さい…。」
色々ダメ出しをされたが全部宗方の伝わりづらい優しさなんだと理解し、洋平は残り迫る結論の時間に備えて考えをまとめ始めた。
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