やり直し

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翌日 ここ数日の分かりやすく元気の無い洋平を見かねて、宗方は放課後洋平を誘ってラーメンを食べに行った。 「なんでラーメン?」 洋平は食欲もあまりなく、少し迷惑そうに宗方に訊ねる。 「単純に俺が食べたいから。あとデートではまだ来づらいから。」 「食欲ない…」 「女々しいこと言うな。味噌でいい?俺の奢りだ。」 目の前に運ばれた味噌ラーメンをちびちび食べ始める洋平。 「辛気臭い顔してそんな不味そうな食い方するな。」 宗方は眉間にシワを寄せて洋平を咎める。 「そんな顔してない。」 洋平もムっとして反論する。 「お前気づいてないの?」 「何が?」 宗方はラーメンを一通り啜って一言言う。 「失恋オーラやばいけど。」 「は!?失恋なんてしてないし!俺が振ったんだから。」 予想外のことを言われて洋平は驚き否定する。 「お前の恋愛下手出てるぞ。」 「いや、だから失恋してないし、恋愛下手とか関係なくない?」 「じゃあ何でそんな元気ない?辛気臭い顔してる?食欲ない?理由説明出来るか?」 「…。…佐藤と、仲良かったのに。冷たくされてる…から?」 「ふーん。30点。」 「は?何で俺の心境にお前が点数付けるんだよ!」 「お前はほんとーーーに人の気持ちにも鈍感だし、自分の気持ちにも鈍感だな。」 「意味わかんない…」 洋平はふいっと宗方から顔を背けてラーメンを啜る。 「俺のアドバイス通り、佐藤の気持ちちゃんと観察したのか?」 「…相手の気持ちなんて分からないだろ…。」 「そこが恋愛下手なんだって。相手を知る努力したのか?」 「したけど…。俺はお前と違ってそういう器用なこと上手く出来ないもん…。」 洋平は俯きながらチャーシューを口に運ぶ。 「相手のことを知るには相手の好きな物を知るのが手っ取り早い。趣味だよ。お前、アイツの好きなアニメ見ろ。」 「え?ここにきてアニメ?今さらだろ。」 「お前が佐藤のこと振ったって聞いて、俺は最初それでいいと思ったよ。でも、蓋を開けたらこんな状態でさ。もう一度やり直しだ。お前は佐藤と向き合いきれていない。佐藤と一から関係作るつもりで相手のことをもっと知るべきだわ。そして自分の気持ちにもちゃんと向き合え。だからまずアニメ見ろ。」 「いやいや、わからない。」 「うるさい。今日レンタルショップでアイツの好きなアニメ全巻借りてこい。話はそこからだ。」 宗方は珍しく少しキツイ口調で洋平に言い放つ。その迫力に洋平は口ごもる。 「…わかったよ。借りて帰る。家帰って全部見てその都度お前に感想送ってやるからちゃんと全部返信しろよ!」 「よし、いい意気込みだ。」 宗方の雰囲気が幾分か柔らかくなり、洋平はほっとしながら残りのラーメンを食べ進めた。
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