第一話 孤独の球場

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 校門を出ると、夕日に照らされたアスファルトの一本道。赤い自動販売機と垣根の緑、それと悠々と涼しげに道を横切る白い猫。猫がこちらをちらりと見て、通り過ぎて行く。うだるような暑さに照らされ、汗で制服が肌に張り付く。背後からは野球部やらサッカー部やら陸上部やら暑苦しい連中がやいのやいの騒ぐ声が聞こえる。一歩進む毎に苛立ちが増す。俺は既にぐしょぐしょになったハンカチで汗を拭いながら歩いていた。  ただでさえ体の弱い上に、あの強烈な頭痛に襲われた後だ。とてもじゃないが休憩なしには家まで辿り着けない。この一本道を抜けた先に確か公園があった筈だ。あそこなら木陰とベンチ、それから水道がある。そこまでの辛抱だ。俺は夕日の重力を背負い、さながら砂漠の旅人の様に地面を踏みしめた。
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