第一話 孤独の球場

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 緑の鮮やかな公園は、橙色のベールを被っていた。リードをつけられた可哀想な犬が舌を出し息切れしながら、小学生ほどの少年に引っ張られていた。カラスの鳴き声が心地良い距離感で響いていた。公園の水道で水を飲んだ後、俺は木の下にある隠れ家の様なベンチに座った。  ここで十五分くらいは休んでいこう。それが良い。親が家に帰るのはいつも遅い。俺が遅くに帰ったところで説教をされることはないだろう。それだけが唯一の救いだ。熱の籠った体を、ぬるい風が少しずつ癒してくれる。頭は未だ重い痛みが残っているが、暑さによる負担が軽減されただけまだましとしよう。
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