第一話 孤独の球場

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 ぐつぐつと湯が沸く音で俺は目が覚めた。エアコンが効いているのか、そこは涼しく心地が良かった。全くもって見たことのない場所だ。俺は自分の状況を確認する。公園のベンチに居たはず。木陰で、ぬるい風が吹いていた。芝生は夕日を反射していた。隣に無礼な中年の男が座って、それから奴は煙草を吸った。そこから、俺の頭を見知らぬ映像が駆け巡り、気を失った。  今は? 今は革製の茶色いソファに寝転び、祖母の家にあるような花柄の毛布が体には掛けられている。目の前には背の低い机。その机には何やら怪しげな木彫りの人形が置いてある。これは何だ? 人の顔? モアイ? まあ何やらそんなようなものだ。その奥、向かい側には今俺が寝転んでいるのと同じようなソファ。隣には観葉植物。やはりどうやら知らない場所だ。何だか分からないが随分体の調子が良くなったみたいだ。
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