二度目のバレンタインはチョコより甘く

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「去年は特殊なバレンタインやったからなあ」  くしゃりと破顔するリョウを、苦虫を噛み潰したような顔で見るアヤ。 「もう忘れた」  無愛想に一言吐き捨ててぷいと顔を背ける恋人を、リョウは愛でるように見つめる。 「でもこうやって、二回目のバレンタインを一緒に過ごせて、嬉しい」    もともとどうして惚れたのか、互いに首を捻ってしまう二人。いつ別れてもおかしくないような関係だった。それでもぶつかって、擦り合わせ、歩み寄り、譲り合って、今またこうして一緒にいる。そのことが幸せでたまらない。月日が経てば愛は冷めてゆきがちだが、この二人はチョコレートを溶かしてしまいそうな熱々ラブラブっぷりだ。  ―――否、熱量が凄いのは一人だけだと訂正する。    二人並んでソファに座り、チョコレートをシェアする。 「うんまぁ~!ここのチョコほんっま好きやねん」  リョウの顔がだらしなく緩み、両手を頬に添えて悶えている。  実は甘いものがそれほど好きでないアヤは、ちびちびとスローペースでチョコレートをかじっていた。そうすれば自動的に、ハイペースで幸せそうにチョコレートを頬張るリョウの取り分が多くなる。 「来年も一緒に過ごせるかなあ」 「うん」  俺も今ちょうど同じこと思ってた、とは口にせず、アヤはただ僅かに目を細めた。   「その前にさぁ、去年あげたチョコのお返し、もらってないんやけど」 「もう忘れた」 【おわり】
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