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「浩市さん、何かありましたか?」
アミはふと思いついたようにマインドマップから目を離して尋ねる。
お店のアイディアに夢中になっていたが、そもそも浩市はなぜ、突然逢いたいと言ってきたのだろうか。
この間、突然、帰ってしまったお詫びだろうか。
それとも、何か別の意図があったのか。
浩市は不意を突かれて、一瞬言葉に詰まる。
「いや、実は…。これを渡したくて。」
浩市はポケットから取り出したものをアミに渡す。
それはラッピングされた箱だった。
「え?あたしにこれを?」
アミは浩市の顔と箱を代わる代わる眺める。
まだ、状況が理解できていない。
「あ、開けてもいいですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
浩市は笑顔で頷く。
ラッピングを解くと、小さな箱だった。
蓋を開けると、そこには鍵が入っていた。
「鍵?」
「そう。実は、立地のいい路面店が空いたんだ。知り合いから居抜きで借りないかと言われて。」
「居抜き?」
「居抜きというのは、内装とかそのままにして店を借りること。普通は、原状回復して、まっさらの状態で借りるのだけど。」
「現状回復…。」
知らない言葉が次から次へと出てきて、アミは戸惑う。
どうやら、アミのために浩市が店舗を借りてくれたらしい。
「でも、あたし、そんなお金ないです。」
「大丈夫。店舗の保証金や家賃は俺が投資するから。アミは自分の好きなように店を運営すればいい。」
ようやく、状況が見えてきた。
浩市はアミの開業のためにお金を出してくれたのだ。
「アミの話を色々と聞いて、俺もパワーストーンの夢を一緒に見たくなったんだ。」
ここにもパワーストーンに興味を持つ意外な人がいた。
ただ、パワーストーンの力に頼るのではなく、利用しようという発想だ。
「でも、あたし、経営やお店のこと、何もわからないし…。」
「大丈夫!経営は俺に任せて!お店のことは店長か料理長を探せばいいさ。」
アミの心は驚きと喜びが交錯していた。
それでも、まだ、気になることがある。
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