49人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで、あたしにここまでしてくれるんですか?」
アミはずっと感じていた疑問を口にする。
これまでだって、そうだ。
独立したいというあたしの淡い思いを実現するために、経営などたくさんのことを教えてくれた。
今度は、店舗まで借りてくれた。
保証金や家賃だって、相当なものだ。
「一緒に見たくなったんだ。アミの夢を…。」
しばらく沈黙した後、浩市は口を開いた。
「アミと一緒に新しい店を開いて、企画や戦略を練ったり、一緒に働いて、喜びや苦しみを分かち合いたいんだ。」
『これって、プロポーズ?』
アミは浩市の言葉を聞きながら心の中で考えた。
店を人生に置き換えたら、まるでプロポーズみたいだ。
「もちろん、アミが嫌でなければの話だけど…。」
浩市はアミを覗き込むように見ていた。
「嫌だなんて!すごくうれしいです。お店を一緒にやってくれるってことは、いつも一緒に入れるってことですよね?」
「まあ、そうだね…。」
「あたし、それだけでうれしい!」
気が付くと、アミは浩市の胸の中に飛び込んでいた。
浩市もしっかりとアミを受け止めてくれた。
見つめあう二人。
もう、言葉はいらない。
二人は熱い抱擁を交わす。
これまでずっとお互いを求めてきたかのように…。
これから先にどんな未来が待っているのかアミにはわからない。
美紀のように浩市の優しさに傷付くときがくるのかもしれない。
新しく開く店だってうまくいくのわからない。
でも、たった一つ分かっていることがある。
例え、成功しても失敗しても、その経験がすべてアミの財産になる。
そう、あたしは間違いなく前進している。
今まで漠然として生きてきた人生に大きな目標ができた。
それに向かって歩んでいる確かな実感がある。
それだけじゃない。
その人生を共に歩むパートナーも見つかった。
今、アミの中には確かなものが心に芽生えていた。
自分に対する自信。
そして、Pride…
完
最初のコメントを投稿しよう!