50人が本棚に入れています
本棚に追加
『昨日届いたデータ、また間違っていたぞ。送信前にきちんと確認してるのか?』
「……申し訳ありません」
残業までして拾い出した数字に間違いが見つかった。出社早々、佐々木さんから内線で指摘が入り、慌てて修正データを送信したところである。
(ふう、朝から疲れた……)
今日は金曜日。関東地方は昨日から雨が続いていて、蒸し暑さに拍車が掛かっていた。社内は空調が効いているとはいえ、通勤だけでマスクの中はドロドロだった。もう随分前からリップメイクはしていないのだけれど、どうせ落ちてしまうなら顔下半分のメイクも止めて良いんじゃないだろうか。
(来週もこの忙しさなのかな)
残念ながら会田さんは来週も欠勤するとの連絡が入っていた。部内で業務分配はしたが、私は確実にキャパオーバーをしていた。増えた日常業務をこなしながらプロジェクトリーダーを務めるのは、いくら失敗前提のプロジェクトとはいえ想像していた以上にキツかった。
『羽賀ちゃん。失敗したって良いんだから。一生懸命やるだけ無駄だよ』
「失敗って、思ってても言わないで!」
『おー、こわ』
無責任な新井田の台詞は私の神経を逆撫でしかしなかった。新井田に限らず周りが失敗して当然と言えば言うだけ、私は反発して何とか成功させてやると力が入るのだった。
最初のコメントを投稿しよう!