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佐々木さんは腰に手を当てて嘆息する。
「もしかしたらまだやってるんじゃないかと思ってな」
「すみません。また間違いがありましたか?」
再送したデータにまた不備があったんだろうか。我ながらミスとかもう勘弁して欲しい。大きな数字は苦手だ。
佐々木さんはフンと鼻を鳴らした。
「そうじゃない。あんたに一つ確認があって来た」
「確認?」
あんたという言い方は珍しい。いくら高圧的な口調の佐々木さんだっていつもは「羽賀」なのに。
「このプロジェクトメンバーの名前言ってみろ」
「え? 急に何ですか?」
佐々木さんは私の隣の席の椅子を引き、どっかりと腰を落ち着ける。細くて長い脚がどこか水族館のカニを彷彿とさせた。
「良いから」
顎を突き出して「言え」と促される。私は椅子を回し、眼鏡の顔を正面から見つめた。レンズの奥、一重の細い瞳が私を真っ直ぐに見つめている。
私は右手を持ち上げて、順番に指を折った。
「一課の新井田さん、三課の岡島くん、それから……二課の佐々木さん」
最後は顎を引き、下から覗き込むようにして答える。すると正面の顔は満足げにうんと頷いた。
「分かってるじゃないか」
(は? 何なのこれ。罰ゲームか何か?)
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