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「羽賀。今年の夏のプロジェクト、リーダーとしてメンバーを取り纏めてくれるか」
「営業部じゃなく、営業企画が纏めるんですか?」
佐藤部長はああ、と頷いた。
「テレワークのメンバーも多いし、打ち合わせはオンラインが増えるだろうから、営業が面倒臭がってやりたがらないんだよ。……ほら」
部長はそう言ってダブルクリップで綴じられた書類を差し出した。それを受け取り表紙の文字を読み上げる。
「(仮称)二〇二〇年カムバックプロジェクト。うわ、何ですかこのネーミング。ダサ」
正直な感想を言えば、正面の顔は片眉を吊り上げた。
「ダサっつーなよ。仮称ってあるだろうが。上のおっさんたちが考えるのなんてそんなもんだよ。名前に意味なんてねぇ。ましてや仮称だろ」
部長はギ、と背もたれに寄り掛かる。
「このコロナ禍だ。このプロジェクトの成功は期待されてねぇ」
「は?」
「失敗しても仕様がねぇって思われてるんだよ。失敗して当然、成功したらめっけもんくらいにな」
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