枯れ女

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 私は「それって」と部長の顔を睨んだ。 「失敗が確定しているプロジェクトだから、営業企画部(わたしたち)にやらせとけってことなんですか」  部長は鼻の下にずり落ちたマスクを直しながら「ちげぇよ」と言った。 「羽賀。そう悪い方に捉えるな。逆に考えるんだよ。失敗したって誰もお前を責めねぇんだ。絶対成功しなきゃいけないプロジェクトを任されるよりよっぽど気楽で良いじゃねぇか」  私は目尻にシワの走る部長の顔から手元の資料に視線を戻した。『(仮称)二〇二〇年カムバックプロジェクト』。改めて見てもダサイ。 「お前、上目指してんだろ? だったらやってみろ。リーダーを経験する良い機会だ。断る理由はねぇ」  私はマスクの中で唇を引き結んだ。 (確かに上を目指すには、プロジェクトリーダーの経験は必須) 「納得はできませんけど……分かりました。やります」 「よし決まりだ。メンバーとの顔合わせは金曜午後の予定だから、空けとけよ」  そう言って部長はくるりと椅子を回す。私はもう一度「はい」と頷いて自席に戻った。  成功を期待されていないプロジェクト。良いわ。成功させてやろうじゃない。
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