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「折角なんだから楽しめば良いのに。他にどんな人が居るの? どうせ私が聞いても分かんないだろうけど』
清花はあははと笑う。旦那は出張、ひなたちゃんはもう寝てしまったということで、暇つぶしの相手に選ばれたのが私だった。
「一課が新井田でしょ、二課は勝本くん、三課は岡島くんって聞いてるけど」
『知らない名前ばっかりね。みんな男ってこと?』
「そう。勝本くんなんて今年入社よ。そんな新人寄越すなんて、二課はやる気がなさ過ぎるわ」
レモンの匂いの息を吐く。いくら失敗前提のプロジェクトとはいえその人選は酷すぎる。勝本くんも可哀想だ。入社一年目にいきなり挫折を経験して病んだりしなきゃ良いけれど。
『その中に気になる人とか、将来有望な人とかいない訳?』
まるで他人事の清花は、どうでもいいところに興味を持つ。
「いないいない。社内の男に興味無し」
私はぴしゃりと言い放った。この会社に七年勤めているが、オフィスをお花畑にしてくれるような男には出会っていない。ファイルやパソコンの並ぶ無機質なオフィスはいつまでたってもモノトーンのままだし、仕事の出来る男も出来ない男も、年上も年下もただ単に私の嫌いな「男」という生き物でしかなかった。
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