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電話の向こうで愉快な声が上がる。
『言い切るねぇ。茜は社外の男にだって興味無いくせに』
「その通りよ。男なんかより仕事の方が断然面白いわ。評価されるされないは別としても必ず結果が出るんだもの」
『あっはっは。相変わらず男らしい』
「んもう。だから男と一緒にしないで」
BGM代わりに点けたテレビには、随分と昔のドラマが流れていた。コロナ禍で新たなドラマも制作できないらしい。どの業界も大変だ。
『やだ。ひなた。起きちゃったの? え、おしっこ? ハイハイ。ごめん、ひなた起きちゃったからまたね!』
「了解。おやすみ」
清花の電話は唐突に終了する。
(いつものことだけど。子持ちは大変よね)
スマホをテーブルに置き、ぼんやりとテレビを観た。書類一枚無い小綺麗なオフィスで、キラキラした女子と爽やかなイケメン社員たちが会話をしている。それは仕事の話ではなく恋バナだ。
「ありえない」
顎を突き出し嘆息した。もし職場にこんなイケメンが居たら私も社内恋愛したりするんだろうか。
「いや、ないな」
ぼそりと呟いて首を振った。仮定に無理が有り過ぎる。遺伝子を残したい男なんてそう簡単に見つかってなるものか。
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