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「二課の佐々木だ。よろしく」
顔合わせに現れたのは一課の新井田、三課の岡島くん、そして二課は勝本くんではなく佐々木さんだった。
「勝本くんじゃなかったんですね」
黒縁眼鏡の顔を見上げ尋ねれば「流石に反対した」と低い声が返ってくる。
「今年の新人はテレワークばかりで禄に研修もできてないし、どう考えたって無理だろう」
佐々木さんは二課のベテランセールスだ。がつがつと仕事をする熱量のある人ではないけれど、冷静に計算高く仕事をこなす人で、端から見ていても出来る人なんだなと分かる。次期課長とも噂されており、だからこそ失敗前提のプロジェクトに参加してくるのは意外だった。
「あれれ。もしかして羽賀ちゃんは若い子がくるの期待してた?」
新井田がちゃかすように口を挟む。普段は新井田と呼んでいるが彼も私より年上のセールスだ。仕事も恋も――人生の全てをのらりくらりと謳歌している男。悩みなんて一つもなさそうで、その部分だけは羨ましい。
私はいやらしい目をする新井田に向かって、眉毛を吊り上げた。
「違います。私も正直、勝本くんじゃ不安だと思ってたんです」
「ふうーん」
含むところのありそうな返事をする新井田に、心の中で舌を出した。
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