枯れ女

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「三課の岡島です。皆さんの脚を引っ張らないよう頑張ります」  最後に挨拶したのは、このメンバーの中で一番若い岡島くん。入社三年目くらいじゃなかろうか、勝本くんまでとはいかないにしてもまだまだ皆を引っ張ったりはできないだろう。 (それでもこの中では癒やし系。上手に使わなきゃ)  私は全員の顔をぐるりと見回して「それでは」と話を切り出した。 「(仮称)二〇二〇年カムバックプロジェクト。本日より始動致します。コロナ禍を理由に失敗して当然だなんて思われているようですけど、私は失敗前提のプロジェクトなんてやるつもりはありません。市況は厳しいですが力を合わせて頑張りましょう。よろしくお願いします」 「お願いします」  佐々木さんの鋭い目、岡島くんの真っ直ぐな目が私に向けられた。新井田だけは「羽賀ちゃんすげぇやる気ー」と相変わらずな返事が返ってくる。 (あんたのやる気のなさの方が問題よ)  四人では広すぎる会議室にぐるりとドーナツ状に配置された長テーブル。その一台に一人ずつ間隔を開けて腰掛ける。ソーシャルディスタンス故の配置でそれぞれの声は遠くなるけれど、この方がメンバーを俯瞰できて良いかもしれない。  ――お前、上目指してんだろ?  そう、私はただの事務で終わるつもりなんてない。どんどんステップアップして上に立つ。馬鹿な男の下で働いてなんかいられるものか。
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