プロローグ

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プロローグ

 何も出来ずにひとり取り残された僕は、ただ呆然と立ち尽くした。  拳を握りしめ、口もきつく結んだまま。  星を隠した闇を見上げ、(たたず)むことしかできなかった。  白い息だけがユラユラと、浮かんでは消えた。  また雪が降り始めた。  風に(いざな)われるまま、なすすべもなく舞い散る。  乱れた心を映し出すかのように。  そしてそのすっかりと()てついた心をひきずりながら、あてもなく、ふらつく足取りで雪の街を彷徨(さまよ)い歩いた。
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