恋は目玉焼き

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恋は目玉焼き

よく熱せられたフライパンの上でじゅうじゅうと音を立て焼かれていく二つの卵。 いいところでひっくり返し両面を同じように焼き、黄身は生よりの半熟に仕上げるのが好みだ。 彼に作る朝食の目玉焼きの片面が焦げ付く様を見ながら思う。 まるで俺たちの恋みたいだな、と。 一緒に住んではいるものの彼はもう俺には気持ちがないようで、俺たちの仲はすっかり冷めきっていた。 自分ばかりがこの恋を終わらせまいと頑張っていた。 昔はお互いの熱量が同じで、両面が程よく焼けて黄身も半熟で艶やかな色をしていた。 だけどいつからだろう。片面にしか与えられない熱、それでもと頑張る俺。 やがて白身は焦げ付き黄身は火を通しすぎてぱさぱさに固まってしまった。 思えば俺がここに押しかけて半年もしない頃から――か? 彼といっしょに住み始めてもう二年。 なぁんだ熱が冷めてからの方がもう長くなってるや。 はは、と乾いた笑いが漏れる。 ―――――俺はもうこんな恋はいらない。 誰も食えないようなこんな恋―――。 俺は焦げた目玉焼きと一緒に自分の『恋』をゴミ箱に捨てた。
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