港にて

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港にて

「じゃあこの辺で食料調達しとこっか」 ロロネがそう言うと、甲板から海を見ていたルイスが振り向いた。 「お!いいじゃん。ついでに……ん?」 飲みに行こう、と言おうとしたルイスは、港のほうを見て目を細めた。 「どしたのルイス」 ロロネが問いかけるが、ルイスは一点を見つめたままだ。不思議に思ったロロネがルイスの視線の先を辿ると、微かにだが町から煙が上がっているのが見える。 「……さっさと買い物してさっさと出ようぜ」 ロロネの言葉にルイスは軽く頷いた。 「じゃ、エリックとチヨメは買い物よろしく。お金はこの中から使って。ロロネと私はその他の必要なもの探してくるから。他は解散。明日の朝までには戻ること。いい?」 テキパキと指示をするフローレンスに、それぞれ返事をする。 「うぃーす!……じゃ、エリックさん、行きましょっか!」 「あー、うん」 絶妙な温度差のある二人。女が苦手な船大工、エリックと、人に対して良くも悪くも興味のないチヨメ。特別仲が悪いわけではないが、チヨメが心開いているのは昔馴染みのフローレンスと、蛇のヤマトと、強いて言うなら船内コックのシュウジくらいだろう。 シュウジも人見知りなくせになぜかチヨメには根気よく話しかけ続け、今では二人でキッチンでおしゃべりする間柄。 「チヨメ、食べたいデザートあるなら、それの材料も買ってきな。作ってやるから」 二人の微妙な距離感を見兼ねたシュウジが声をかける。 「シュウちゃーん!ありがとう!行ってきまーす」 チヨメは子供みたいにきゃっきゃとはしゃぎながら、エリックを置いて船を降りてしまった。 「俺……仲良くなれるかなあ」 エリックの呟きはに届くことなく波の音に消えた。
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