6人が本棚に入れています
本棚に追加
1.2×7=?
二限、数学の時間。
ノートに書きなぐった数式の隣に簡単な掛け算が潜んでいる。
2×7、等号の向かう先は、ぐちゃぐちゃの毛玉みたいな落書きだ。
微分方程式の小難しい式の先には、ちゃんとそれっぽい答えが出ているのに。
毎年、この日が来ると何となく周りに合わせて残念がったり、母親からのぶんをカウントするか否かの論争を眺めていたりした。俺はあんまりしっくりこなかったし、友チョコだの義理チョコだの、貰った事も何回かあったから乾いた笑いでやり過ごした。
そういえば、受験ゼロ学期とかで体調管理のために担任が教室に加湿器を置いてくれている。
白いおちょぼ口の加湿器だ。
今朝見たら、俺の顔も似たようなものだった。
へたった海藻みたいなウェーブのかかった天然パーマ未満の前の癖毛を毎朝直すのも面倒だったし、それをいじってくれる友達もいたから、なんとなく櫛で梳かすのが最近のお決まり。
もみあげ長いな、とか左右で眉の太さが若干違うとか、眠たそうな顔がイマイチとか、色々時間が無い事を言訳にして、家を出る。
俺のノートが導けなかった答えを、世界中のカレンダーというカレンダーが指し示している。
今日は、二月十四日だ。
最初のコメントを投稿しよう!