5.終わらないバレンタイン

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5.終わらないバレンタイン

 今日はチョコチョコ、みチョコチョコ。  合わせてチョコチョコ、チョコいくつ? 「俺は今年もゼロ!無チョコチョコだぜっ、ははっ!」 「フッ。俺は、一個だ……ッ!」 「なっ、なんだって……っ!?」 「まあ、コンビニでチョコ買って、店員のお姉さんから会計後に手渡しで受け取っただけだけど」 「つまんな」 「ざけんな」  教室で朝からわんやわんやと騒いでいる友人たちを見やる。その中に、いつもの調子でアイツも混じっていた。笑ってはいるが、話には参加していないようだ。  俺は2×7の答えを書けないまま終わったっきりの数学のノートを閉じ、意を決してあの集団へと行こうとする。  すると、隣の席の女子が俺の肩を叩いて、教室の後ろの扉を指差した。 「ねぇ、あれ卓球部の女の子じゃない?」 「ありゃ、ホントだ」  ありがとう、と礼を言って、仲のいい卓球部の女子に手招きされるまま歩いていった。 「よ、どうした?部活の連絡?」 「いやっ、えっと。これ、義理チョコ。部活の皆に渡してるやつ」 「えっ、ありがとう!いや、びっくりした」 「まあ、私普段お菓子とか作らないからね、びっくりするのも当然だよ」 「いや、なんというか……こういうの、やるタイプだっけ?」  気恥ずかしさに――後ろにアイツが居るからだろうか――俺はその子をいつもの調子でからかって、その子も冗談だと分かって小言を返した。 「あっ、そうそう。部活の事もだ。あんね――」 「ほうほう――」  数分話した後、解放された俺はつったかと席に戻った。  そんな広くない教室の後ろで、男女が仲良さそうに会話しながらチョコを渡している。こんな日だから、普段は注目とはかけ離れている俺に視線が集まっていた。 「本命?」 「まさか。義理だよ」 「義理ねぇ」  なんて会話を隣の女子としていると、二時限の休み時間の終わりの鐘が鳴った。  まあ、昼休みの方がいいか。
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