5.終わらないバレンタイン

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 昼休み、いつも飯を食っているグループと、たまに遊ぶアイツの友人たちのグループにチョコを渡しに行くと、ぎょっとされた。 「男から貰ってもなあ」 「つかお前、さっきもらってただろ。それよこせよ」 「やらんわ。文句言うなら返せ」 「いやっ、それはなんか」 「なあ?それはなんか」 「こいつら……」  手足の震えを誤魔化すようにちょっと強めに冗談を言うと、しゅんとした友人たち。無難な地味めのラッピングを色んな角度から見つめているのを見ると、ちょっと初々しさを感じてしまった。  けれど、ハートのヤツは、渡せなかった。  ちら、と横目でアイツの方を見ると、どこか残念そうな顔をしている――とは、俺が思いたいだけかもしれない。いつもと変わらないようにも見える表情に少しがっかりしながら、どうせ渡すなら放課後時間を取って二人きりの状態を作って渡そう。  そう思いながら、機を窺う内に一週間、二週間と時間は過ぎていった。  男友達の間で後々判明した、アイツだけ友チョコを貰ってない事件は男子の間でネタにされたりして、ますます渡しづらくなる。  それに、冷静に考えて、やっぱり男から男へ本命チョコを渡すなんて、おかしいだろうか。  消費期限まで、あと半年。  そんなに時間をかけても、あるいはもっと時間が経ったって、そのの前に足がすくんで、赤いハートのラッピングのチョコなんて、渡せそうになかった。 ――そうして、二月の最後の日が、やってきた。
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