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6.うるうる涙、甘く蕩けて
今年はうるう年で、四年に一度の二月の肉の日は月曜日。
珍しい平日に、朝のHRの後友人どうしで祝日がいいコールが飛び交った。
そんな日に限って、急に練習が休みになったからこれ幸いと放課後映画を観に行こうとして、教室に財布を忘れたりする。
「運、ないなぁ……」
そうぼやきながら、リュックの中のチョコを気にかける。
自分でも、おかしいと思う。
どうせ渡せやしないチョコを、ずっと鞄の中に入れているなんて。しかも、ハートの角がちょっと凹んでいる。こんな歪なハート、違う意味でも渡せやしない。
なのに、家に帰って部屋の机にチョコを置いても、朝にはリュックに入れたくなる。
――もしかしたら、今日。
それをもう、十五回繰り返していた。
うるう年でなければ、三月になっているところだ。
財布を盗まれる心配よりも、渡せないことへの痛みの方が強くって、重い足取りで空が暗くなる頃にようやく教室に着いた。
鍵が締まってるものだと思って職員室に行くと、
「そういえばさっき誰かが取りに来てたな」
「あ、ありがとうございます」
誰だろう、といくつか会話の候補を考えながら、教室を開ける。
「……あっ」
「……よ」
そこには、窓辺に腰かける、アイツが居た。
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