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アイツは俺と挨拶のなりそこないみたいな短い言葉を交わすと、俺の財布を放り投げてきた。
「あっ、わ」
「それ、教室に落ちてた」
「あ、ありがとう」
冷たいのだか優しいのだか分からないようなツンとした態度でアイツは頷いた。
いつもよりとげとげしい気がする。
普段の冷たさが一歩引いたような距離感なら、今のそれは間に壁が出来たような感じだ。
「じ、じゃあ」
「……うん」
結局、こんなおあつらえ向きな状況になっても、高鳴る心臓と震える手足に言訳して、渡そうと決めたものを、諦めきれずにしぶとく持ち続けているハートを、渡せない。
自分のだめさ加減にブルーな気分になって教室の扉を開けようとした時だ。
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