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そんな調子で、アイツの事ばかり考えていたから、その日が臨時の部活の日だという事をすっかり忘れてしまっていた。
部活内の仲のいい友人たちに散々からかわれ、ひいひい言いながらグラウンドを走った。部活前にはグラウンド5周が前菜だ。ラーメン店で言うところの食券選び。
その後、食券を渡す感覚で素振りをして、ラーメンを食べる覚悟で練習に励んだ。
部活が終わるころには、すっかりへとへとで、ラーメンなんか食べたら吐くと思った。部活の友人たちはむしろ俺の話を聞いてラーメンが食べたくなったらしく、これから夕方の戦場に赴くという。
「ごめん、俺パス」
「おいまじかよお前!俺らお前のせいでラーメン行こうってなったんだぞ~」
「やっば、これはネタでしょ」
「ごめんって。今度、今度一緒に行くから」
「いや今度は別によくね」
「だな」
おいっ、なんて言いながら、先に帰った友達を見送る。
俺はトイレに行ってから、おじいちゃん体育教師が閉めかけた校門を滑り込みで飛び出した。
「セーっフ!」
「おいおい、慌てなくても目の前で閉めたりしないよ」
「ごっ、ごめんなさい」
「次は余裕をもってね。それじゃ、さようなら」
「さようなら」
怒られたなぁ、と思ってドキドキを抑えながら前を見た俺は、また別の意味でドキドキしてしまった。
「……よ。久しぶり」
「……あっ」
そこには、照れくさそうに学生服のポケットに手を突っ込んだ、アイツが立っていた。
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