3.星5アイテム、「ハート」

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「……明日、とか。また、一緒に帰ろう」 「えっ」  アイツはそれだけ言うと、早足に電車から降りてしまう。  扉が閉まる瞬間、驚いてアイツが出ていった方を見たままだった俺は、学生服の袖に半分隠れた手が、ぴょこっ、と手を振っているのを見つけた。寒さに震えているような小さな「ばいばい」で、俺は直ぐに振り返せない。 「ぇドアが、閉まりまぁす。ぁ駆け込み乗車ぅはおやめくだいぃ、ドゥアが、閉まりまぁす」  癖のある駅員さんの声が終わるころにようやく片手を上げたが、既に電車が動いた後だった。 「素直じゃ、ないな」  苦笑しながら、緩む頬が恥ずかしくなって、周りを気にして俯いた。 「……あっ」  その時だ。  俺が、どうしてアイツにここまでこだわるのか、その理由が分かったのは。 「……ハート、マーク?」  手持無沙汰あそばせ、リュックさん。  グレーのリュックの黒い肩紐は、ぎこちないハートの形に遊ばれていた。  アイツとの間に耐えられず、無意識にハートマークを量産していたのだろうか、と気が付いた時、心臓が口から飛び出るかと思った。 「俺――」  ひょっとして、アイツの事、好きだったのか。
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