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ホットチョコが咲いて羽ばたいた鳥の脚を掴んで、俺は部屋の窓から飛び出した。
そこから見た景色は、ミュージカル映画の最後に似てとても鮮やかで、世界の他に自分しかいない、今まで見た事のない空間だった。
鳥はいつの間にか二羽が融合して巨大な姿になっていた。その背の上で、雲のリズムに合わせて踊る。パステルカラーのような淡い気持ちを乗せた歌をハミングしながら、空のステージで笑顔を振りまく映画の中の登場人物たちに手を差し伸べられた。
――さあ、君も!
「……そっか。俺は、俺なのか。周りとか、関係ない。伝えたい想いは、伝えなきゃ」
ミュージカル映画が終わるころ、俺はそう思った。
その結果、アイツが嫌な気持ちになってしまったら、きちんと謝ろう。
悩みが溶けると、想いは固まる。
バレンタインを翌日に控えた俺は、二種類の市販のチョコを買いながら、思った。
恋をするって、チョコづくりみたいなものだろうか。
なんて、ちょっと気取って帰路につく。次この道を通る時は、きっとアイツに一個だけ買ったハートのラッピングのチョコを、渡した後だったらいいよな、って、考えながら。
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