19人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、突如世間を騒がせるやっかいな疫病により、ソーシャルディスタンスが求められるとサイン会やコンサートの活動はできなくなってしまった。営業は減っているというか今後の予定は全て白紙。
そんな状況下で社長は私に一つの命令を下した。
「いいか、もみじ。サイン会もコンサートも出来ない状況なんだ。ほら、今流行ってんだろナントカ動画とかで生放送するやつ。あれなら金かけずに簡単にできるんだろ?下手したら課金ってやつでジャンジャン儲かるって聞いたぞ。今、うちの事務所にはもう金がない。お前の新しいCDを作ってやる金も衣装を用意してやる金もない。なんなら前作ったCDの制作費も今の売上じゃあ回収できてない。このまま売上が無ければ、お前に費やしたうん百万円のせいでうちは倒産だ。いいな」
「えっ、ちょっと、社長。そんな配信とか私、わかんないですよ」
「うちの事務所でスマホとパソコンがまともに使えるのはお前と経理の藤井だけだ。な。これは社運がかかったプロジェクトだ。頼んだぞ」
「そんなぁ」
藤井さんをチラッと見ると僕は経理ソフトしか使えませんという顔で、静かに首を横に振るだけであった。
最初のコメントを投稿しよう!