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「逃げろ!」
ユタカは田中を振り返り、声の限りに叫んだ。
言われるまでも無かったのか、田中は地面を這うようにその場を離れていた。
ユタカも続く。
先程まで二人がいた場所にもオレンジ色の柱が突き立っている。そこにあったものは消滅していた。ユタカはしりもちを突きそうになるのを堪えてただ、走り続けた。
ずっと考えていたことがある。
怪獣は交通インフラを破壊するような調子で攻撃をし続けていた。それなのに、アスカさんのバイクは一度も狙われた様子を見せていない。
怪獣は、別に人間の営みを崩そうとしているのではない。何かの習性に引かれて攻撃をし続けていたのだ。
では、狙っている物に共通する特徴は?
恐らく、光っている物だ。
怪獣は最初、太陽に向かって吠えていた。
その後、ビルや海に向かって攻撃を始めた。全て、太陽の光を浴びて光っている。
ならば、魔王達に攻撃を誘導させるのは容易だ。魔法かなにかを使わせれば良かった。そして、ちょうど良いことに、魔王は挑発に乗って魔法を使った。
それも、極大の光を放つ最強クラスの魔法。
全て、ユタカの計算通りだった。
だが、安心はしないし、慢心などもっての他だった。
ユタカの心臓は冷たく鳴り続けているのである。
当たり前だ。あのビームの恐ろしさを改めて知ったのだから。
そして、魔王は恐らく生きている。
逃げ続けなければならない。
「貴様らあ、ぜったいに許さんぞおおおおおおおおお!」
魔王は咆哮を上げた。
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