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三日ほど何をする訳でなく一人で部屋にいた。
貯金は少しならある、だから暫く家でゆっくりしていればいい。
けれど寂しさが体をじわりと侵略していく。
誰かと話したい
誰かと関わりたい
誰かを攻撃したい。
三日目の夕方、居ても立ってもいられずに靴を履いた。そして駐輪場に置いてあった自転車に飛び乗った。
新しい職場を探さなくてはならない
それは頭にあったのだが体が自然と向かった先は相川さんの家の近くのスーパーだった。
相川さんを見たい
車椅子の旦那さんと一緒にいる所を見たい
相川さんの一挙一動を余す所なく見ていたい
相川さんを攻撃したい
そして私を安心させて
けれど、相川さんはそのスーパーには居なかった。いつもこれぐらいの時間帯に行けばその姿を見られるのに。
スーパーをあてもなく何周も歩いていると、入り口の求人票が目に止まった。
ここは時給が低すぎる、矢萩より300円もひくい。確かに客も少なく仕事は楽そうだがこんな給料では生活していけない。
新しい職場のことを思うと憂鬱が襲ってくる。
その時後ろから誰かに声をかけられた。
「佐藤さん?」
振り向くとそこには相川さんがいた、車椅子の旦那さんと一緒に穏やかな笑顔を向けている。
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