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まさか相川さんの方から声をかけてくるなんて考えたこともなかった。相川さんはいつもオドオドしてカーストの頂点にいる私に過大なまでに気を遣っていたからだ。
「佐藤さん、急に矢萩辞めちゃったけどどうしたの？」
相川さんは自分が原因で辞めたとは思ってもない様子だった。あの日のことは彼女には伝えられていないのだろう。
何故だかその邪気のない瞳に吸い寄せられていく。
憎い、私から全ての物を奪った佐藤さんが憎い。
そして何故だか大きな声が出てこない、蚊の鳴くような声で言い返すのが精一杯だった。
「……あなたのせいよ」
相川さんは不思議そうな顔で私を見ている。
どうして何もかも知らないふりをして善人ぶるのだろう。
そんなにいい人でいたいのだろうか。
涙が流れ出て止まらない。
「あなたのこと虐めたって店長にパワハラでっちあげられて、それで辞めさせられたのよ！」
恨みのこもった目で見ると相川さんは高らかに笑った。
「あっそうなんだ、佐藤さんはとうとう失脚しちゃったんだ。意外と早かったわね」
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