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ところが次に店長が発した言葉は私の期待とは正反対のものだった。
「佐藤さん、良い歳して人を虐めるなんてみっともないことは止めてください」
「……虐める?私は虐めなんてしていません!」
「虐め」という単語を出され瞬間的に頭に血が上り強い口調で言い返した。「虐め」は他人を傷つける非人道的な行為であると理解しているし、断じてそんなことはしない。
店長は気弱な性格が嘘のように私を強い眼差しで睨んだ。
「人の失敗を笑い、悪口を言う、これは立派な虐めでパワハラ案件だ!」
私の仲間たちが反旗を翻すべく頷き、冷房が効きすぎている休憩室で額から汗が滲む。
パワハラや虐めをしている自覚などない、ただみんなを盛り上げようと、どうしようもない人間の話をしていただけなのに。
私は「虐め」「パワハラ」をする人間ではない。降って沸いた冤罪に指先がガタガタと震える。
荻原さんが目に涙を溜めながら、私を睨んだ。
「相川さんが入店した時から悪口ずっと言ってました!本当は私たちは嫌だったんだけれど、自分が言われたらと思うと怖くて、佐藤さんに同調するしかなくて」
河岸さんが親の仇をとったかのように得意気にこう言った。
「それに相川さんの他にも佐藤さんが虐めて、それが原因で辞めた人たくさんいます!」
ここにいる三人は、相川さんやそれまで辞めていった人の悪口で盛り上がっていた癖に全責任を私になすりつけたのだ。
店長が一歩私へと歩み寄った。そのあまりの圧迫感で一歩後ずさった。
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